残留意思

やぁ,久しぶり.

君と最後にあったのがいつだかはっきりと思い出せないぐらい,連絡を取れなくてごめん.この想いを固定させいる今,僕は元気だ.

 

君と最後に会ったのは,倒壊して炎に包まれたビルの一室だったか.

まさか,こんなにも簡単に日常が崩壊してしまうなんて僕らは想像もしていなかったよね.

あの,元は意思を持っていたであろう"成れの果て"達に追い詰められて,僕は窓から飛び出した.馬鹿だよね,その時一瞬,憧れたんだ.

(翼が欲しい)

ってね.結果から言うと,僕には無理だったんだ.空への憧れ,高みへの想いなんてなかった.ただ,高いところから人々を見下ろして,美しい翼を見せびらかしたいって.でも,僕の(何よりも強く生きたい)という想いは嘘じゃなかったよ.優しい君は,そんな背伸びしなくてもいいって言うかもしれないけど,僕は頼るってことが出来ない質でね.話が逸れたけど,今の僕は君の知っている僕とは違う.ビルから飛び降りて,怪我一つないほどの屈強な肉体を手に入れたよ.だから,僕は大丈夫.この先もまだ生きていける,生き抜いて見せるよ.

風の便りに聞いたけど,君は翼を手に入れ,美しい白銀の毛並みを持つ獣になったそうだね.何でも,出会ったものの運命を大きく揺さぶる女神だそうじゃないか.窓辺のピアノで懐かしい調べを奏でる君は,変わってしまったのかな.

でも僕は知っている.君は誰よりも願い,祈り,想っていた.それは今の世界で何よりも力になるはずだ.僕らの知っている人の多くは,すでに混沌に飲まれてしまったけど,新世界はもしかして君が望んでいた世界,君があるべき世界なのか?

だいぶ長く語ってしまった.この世界の向かう先は分からないけれど,また近いうちに僕らが会えるよう祈っている.その時は,僕の運命を君に――いや,それは出会った時に話そう.

 

君の好きなメロディが遠くから聞こえてくる.

幻聴なのか不思議な力なのかわからないけど…

今はこの心地良さに身を任せることにする.

 

今夜も夜空が素晴らしい.

おやすみ.